助産師が伝える災害対策②産後編

さてさて、今回は前回に続いて災害対策について、赤ちゃん編です。

前回もお伝えしましたが、妊婦さんや乳幼児がいるご家庭は『災害弱者』に属します。

若いから大丈夫と油断せず、行動に移す場合は、サッと動けないことを前提に、早めの決断が必要になってきます。

なぜ産後は特別なのか?

産後のママの身体はホルモンの影響、睡眠不足で集中力や記憶力が落ちており、分娩でできてしまった傷のせいでさっと動けない状態です。

赤ちゃんも授乳をはじめ、大人の手を借りないと生命維持もできない状態ですよね。

そのため、ママも赤ちゃんも『特別』なのです。

では、どのような対策ができるのか見ていきましょう。

勉強するヒヨコ

非常用バッグに入れておくべきもの

一般的な非常用持ち出しバッグに赤ちゃんとママに特別に必要なものを挙げてみました。

赤ちゃんのために
  • 母子健康手帳
  • おむつ、おしりふき、皮膚が弱い赤ちゃんにはワセリン
    • オムツ交換のたびに薄く塗っておくとおむつかぶれ予防になります。おむつに限りがある状況では交換の頻度が下がるので、皮膚がかぶれる可能性は高くなります。
  • 液体または粉ミルク、哺乳瓶、紙コップ
    • 哺乳瓶が足りなければ紙コップで授乳することができます。
  • レトルトや瓶詰の離乳食、スプーン
  • 着がえや肌着
  • 抱っこ紐、スリング、ベビーラップなど体に密着させて一緒に移動できるもの
  • 大判の布またはタオル
    • 丸めることで授乳クッションの代わりになったり、赤ちゃんを包んで安心して眠れるようにしてあげたり、目隠しになったりと役に立ちます。
  • ※小さいお子さんがいる場合は、少しでも甘いものをあげると安心につながります。
ママのために
  • ナプキン数枚
    • 環境の変化やストレスでホルモンバランスが崩れて出血する可能性があります。
  • ロングスカートを一枚
    • 着がえや授乳に役立ちます。ゆったりとしたスペースのため、フレアかプリーツのものがよいでしょう
  • 必要時、母乳パッド、ビニール袋
    • 避難所生活が長期に渡る場合、生理用ナプキンで代用もできますが、肌に合わないこともあります。
    • 乳腺炎の前段階で、乳房の熱感が気になった時、ビニール袋に水をいれて冷やすことができます。また汚れたものを入れるのにも役立ちそうです。
  • 普段飲んでいる薬
  • 自分用の水分、非常食
    • 母乳分泌をキープするため、他の人たちよりも多く必要とされます。

気になる衛生面

哺乳瓶の消毒は、離乳食が始まっているかどうかを目安に考えてください。

清潔な哺乳瓶を用意することが難しければ、紙コップの口をすこし折り曲げて直接赤ちゃんのお口に注ぎこむこともできます

また、ミルク調乳には70度以上のお湯が必要ですが、液体ミルクはその問題はクリアできますね。

災害時に圧倒的に強いのは母乳栄養です。

消毒も調乳も必要ありません。ママが水分や食事をとることで赤ちゃんにも栄養も水分も与えることができますし、スキンシップでお互いの安心に繋がります。

ガッツポーズのヒヨコ

母乳をどうしようか考える際、『災害時に強い』というメリットも思い出していただければ幸いです。

ママのこころとからだ―避難所での過ごし方

不安も大きいでしょうが、できるだけリラックスして過ごしていただくのが一番です。

まず、無理をせず、ご自身と赤ちゃんのお世話だけに集中してください。

では、一つ一つの状況について考えてみましょう。

母乳はどうやってあげればいいの?

また、避難所のスタッフに、赤ちゃんが一緒だということ、また母乳栄養中だということを必ず伝えておき、食事や水分補給に配慮してもらえるよう手配しましょう。

赤ちゃんの生命維持のために大事な母乳です。優先されることに罪悪感を覚える必要なないです!

母乳を与える母親

授乳スペースは避難所にも設けられるかもしれませんが、却って人気がなくて心細かったり、夜間は移動が足元が見えなくて危険だったりで、ご家族の近くで授乳する方が安心だったりもします。

その際は、必要なものリストにも挙げていますが、ロングスカートを首からすっぽりと被ると、人目を気にせず授乳することができます。

スイカ

それでもいかにも授乳している風で気になる、という方は授乳服をご用意することも一つの手。

良質なものは一見授乳しているように見えない造りになっています。

赤ちゃんの泣き声、周りの視線が気になる

赤ちゃんは泣く生き物です。育児を経験している大人には身に染みて理解しているはずですが、心ない一言でご家族は傷ついてしまうこともあります。

また、赤ちゃんとひとくくりにしても、個性があるもの。よくぐずる子もいれば、あまり泣かない子もいます。

普段泣かないお子さんでも謎の『夜泣きフェーズ』が一時的にあったりもします。

大人は泣く赤ちゃんを泣き止ます努力はできますが、すぐに泣き止むかどうかは赤ちゃんが決めることです。思い通りにはなりません。

周りの人に気を遣ってしまいますが、パパやママが悪い訳ではありません。

赤ちゃんを抱いて困っている女性

避難スペースには同じように赤ちゃんがいる人たちの近くにしてもらったり、パパとママが了承できるのであれば、「抱っこかわりますよ」などのご好意に甘えてみてもいいと思います。

家族で取り組む安心につながる準備

ご家族で役割分担は決めておきましょう。

育児とはチームワークです。チームワークには打ち合わせが必要ですよね。

ライフラインが途切れた時、自宅で備えがあるか、期限はいつなのかを確認することは今からでもできます。

また、近くの避難所についても場所の確認もし、実際に散歩がてらご家族で行ってみてもいいかもしれませんね。

赤ちゃんを抱く男性と女性

さいごに

少し怖いお話が多かったかもしれませんが、『備えあればうれいなし』です。

ご夫婦で災害時について話し合うことで、安心に繋がることかと思います。

そこで『家族力』もぐっとアップするのではないでしょうか。

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