はじめに~うまくやりたいのにそれが難しいあなたへ
前回は、パパ側の産後クライシス対策(『産後の妻が変わった?』それには理由がある~パパに知ってほしい妻のココロと身体のお話)についてお伝えしました。
今回はママ側です。
『なんで夫にイライラするんだろう』
『本当はこんなこと言いたくないのに』『もっと二人で仲良く赤ちゃんのお世話がしたいのに』
『分かってもらえないのが辛い』
このようなお気持ちを抱えてしまうこと、ありませんか。

実はあなただけではありません。
産後の特別な変化が密接に関わっていて、その特別な変化を体験しない夫との間に溝ができてしまっているのです。
それでは、一つ一つ紐解いていきましょう。

産後クライシスは、突然始まらない
産後クライシスとは、赤ちゃんが生まれて夫婦仲の関係が悪化すること、と説明されています。
しかし、妊娠中からその種は芽生えてきていることがほとんどです。(参照:妊娠期から始まっている『母としての心の変化』)
そして産後から明らかになっていく、ほんの少しの違和感、あなたが飲み込んだ言葉、『生まれたら変わってくれるかも』という期待からの失望。
これらの小さな積み重ねで産後クライシスは静かに進行していきます。

妻が無意識にしてしまう行動の落とし穴
愛おしい赤ちゃんがいるので、争いごとはしたくない。夫に嫌な思いをさせたくない。そんな思いで、まずこのような行動に出てしまいます。
- 我慢する
- やってほしいことが言えなくなる
- 夫に期待をしなくなる

心の中で戦力外通告を出してしまうと、妻の心は一人で頑張らなきゃと頑なになり、夫は家庭内で居場所がないと感じるようになります。
実は悪循環なのです。
産後の私がツライ理由
このような流れがあるとはいえ、『以前の私はこんなのじゃなかった』と落ち込んでしまうこともあるかと思います。
しかし、産後とは生涯のうちでもとっても特別なフェーズなのです。

産後のホルモンの影響
妊娠を保つためのホルモンが急低下し、今度は母乳を出すホルモンが増えてきます。
そして、真夜中でも赤ちゃんのちょっとした異変にもすぐに対応するために常に戦闘モードになります。
そのため、感情に波が生じ、いつもよりイライラしやすくなったり、急に不安になって涙もろくなったり。
感情をコントロールすることは非常に難しい時期です。
睡眠不足
赤ちゃんの授乳のため、日中も夜も細切れ睡眠を余儀なくされています。
まとまった睡眠がとれないでいると、冷静な判断ができなかったり、どうしても感情がネガティブな方に傾いてしまいがちです。

3時間おきの授乳と言っても、実際に横になれるのはせいぜい2時間。そこにぐずりの対応をしていると、あっという間に次の授乳の時間が来てしまうなんてこともざらにありますよね。
さらに辛い状況です。
身体の変化
傷の痛み、後陣痛、乳房の張りで産後はしばらく痛みが伴います。
また、出産のために関節が一時的に緩くなっているので、身体が思うように動かなかったり、慣れない抱っこや授乳で肩こり、腰痛もひどくなります。
痛みは、誰かを気遣う余裕を奪ってしまい、また動けない自分を責めやすくなる背景を作ります。

母としてのプレッシャー
我が子はちゃんと生きていけるのだろうか、成長できるのだろうか、自分はこの子を守っていけるのかというプレッシャーがのしかかります。
また泣き止まないと息が止まってしまわないか、何か病気なのではないかと不安な気持ちにもなります。
逆に、静かに眠っていても、ちゃんと息はしているのだろうかと確認してしまいます。
このように、正解のない育児のスタートは、心が休まる暇もないのです。

どうして夫は変わらないの?
夫が変わらない理由は、身体の構造の違いにあることが大いにあります。
なぜ会話が成り立たないかのヒントが隠されているのではないでしょうか。

ホルモンの変化がない
妻の妊娠から出産、産後まで、男性のホルモンは常に通常です。
そのため、夜中に赤ちゃんが泣いていても気が付かず、起きれない人が多いのです。
父性の育ち方が違う
女性は妊娠が分かった時から、母親としての心の成長を始めていきます。
また、胎動を通して『自分ではない、別の命』を24時間感じているので、守ってあげたい、元気でいてほしい、と愛情がすくすくと育っていきます。
同時に、その命を失うかもしれないという不安や恐怖心も芽生え、食や環境の安全に気を配るようになります。
男性には、その実感がほぼありません。なので、妊娠中に育つ『父性』と『母性』の差は大きく開いてしまいます。
父親としての実感は、赤ちゃんが生まれてから初めて得るという方も少なくないのではないでしょうか。
父性の育ち方には人によって違いはありますが、日常の育児に携わっているかに左右されると言われています。
オキシトシンというホルモンは、授乳や出産に大きく関係しますが、実は『愛情ホルモン』と呼ばれ、男性でもスキンシップで分泌を増やすことができます。
そのため、赤ちゃんに触れれば触れるほど、愛情が増します。

このように、父性は徐々に育っていくものなので、例えば里帰り出産などで、父子の別離があると、夫婦間での会話はかみ合わないと感じるのではないでしょうか。
上手くできないのが怖い
このように、身体の構造の違いですれ違いが起こってしまうこともありますが、『小さくて怖い』『自分だと赤ちゃんを壊してしまいそう』などの恐怖心で、育児に取り組めないという心理もあります。
また、初めてで上手くできなかったり、自分が交換したオムツの手直しをされるなどの経験で、『役に立っていない』と傷つき、育児から遠ざかってしまい、妻から見ると無関心・無責任のように見えてしまうこともあります。
『小さくて脆い』対象に対して、母親は『守るべき存在』と認識し、父親は『自分が触らないほうが良い』と捉えてしまうのです。
しかし、大事なポイントとなってくるのが、愛情がないわけではないということです。

産後クライシスを打破するには
さて、ここまでで、夫との会話が嚙み合わない理由が理解していただけたかと思います。
しかし、理解をするということは、仕方がないと我慢をすることではないのです。
仕組みを知るということで、改善策も見出せます。
違いを知ることで、お互いに思いやりを持つことができます。
明日から、あなたが少しでも楽しく、温かい家族の愛情を感じる育児ができる手段を考えてみましょう!

限界を認めることは弱さじゃない
育児は、本当にハードワーク。太古の時代から人に助けてもらい、決して一人ではなかったのです。
『母親だから』強くなければ、頑張らなければ、という言葉はいろんな場面で耳にしますが、どのお母さんもすでに一生懸命に必死で頑張っているのです。
人の手を借りることは負けを認めることではありません。
肩の力を抜いて、一度深呼吸してみましょう。

正しさよりも共有が欲しい
女性と男性の違いを知ることで、それぞれの『正義』があることが分かります。
そのため、どちらが正しいかという議論には着地点を見出すことは非常に困難。
『正しさ』よりも、『どう思うか』『どう感じているか』を伝える方が、相手にとっては伝わります。
また、主語を『私』にすることで、相手にマイルドに、かつ正確に受け取ってもらうことができます。
逆も然りです。相手のことを知り、『この人はこう感じているんだ』と受け入れるだけです。
意見は一致する必要はありません。
感情を共有することと、感情をぶつけることは違います。
今日から私ができること
では、以下のことを少しずつ試してみてください。
- やってほしいことは具体的に、細切れに伝える
- 『察してもらう』『言わなくてもわかる』思いは捨てる
- 嬉しかったこと、助かったことはそのまま伝える
- 身体がツライ、睡眠不足でだるいなどの不調も伝えてもよい

それでも苦しいとき
ママご自身の心と身体の健康を取り戻すために、専門家の力を借りることは悪いことではありません。
どうしていいか分からない、自分がどうしたいかもわからない、ただツライ。
そんな状態でも大丈夫です。
住んでいる自治体の保健師や、近くにいる助産師にご相談ください。
あなたのSOSは必ず受け止められます。

さいごに
とても長い記事になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
『ツライ』と気付き、『どうにかしよう』とこのブログにたどり着いたあなたは、きっと産後クライシスには陥らないでしょう。
今までの誤解と、言えなかった言葉の積み重ね。
それを知ったあなたは、幸せな家族のキーパーソンとなるとても素敵なママなんです。
応援していますね!

